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足の不自由な母ギツネ

 今春から夏にかけて4組のキタキツネの親子と遭遇した。

 初夏に出合った家族は、これまで観察してきたキツネの子育ての様子とは異なり、僕は少し戸惑っていた。3匹の子ギツネは巣穴を離れて遊び回るまでに成長していたが、親ギツネの気配がまったくない。いずれ、姿を見せるだろうと日没まで待ち続けるが、一向に現れず。

「なぜだろう…」そんな疑問を晴らすために夜間に巣穴の前にセンサーカメラを設置すると、親ギツネがけんけんをしながら子を呼ぶ姿が映っていた。想定外の痛ましい映像を繰り返し確認すると、左前肢の先端部がナイフで切断されたように欠損している。おそらく何らかの人為的な要因が関係しているのだろう。

 これまで母ギツネが来る日も来る日も足を引きずりながら子のために獲物を探している姿を想像すると、胸にこみ上げてくるものがある。と、同時に親子の揺るぎない絆、そして野生動物の健気さと強さをあらためて知る真夏のできごとだった。
 
 訪れるたびに不安そうな面持ちの彼女だったが、子育てが終わりに近づいてきた盛夏には草地でリラックスする姿が見られ、安堵の表情が垣間見えた。
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