DAISAKU-UEDA Wildlife Photographer

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Archive #2021
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厳寒の朝 タンチョウ

 今朝も気温が氷点下21度まで下がり連日厳寒の朝を迎えています。 僕にとっては心踊る寒さなのですが、 動物たちにとって過酷な季節の訪れです。 河川で夜を越したタンチョウは、寒さのため、 太陽が昇っても動く気配はありません。 日の出から一時間後にようやく餌を探しに動きはじめました。 動物たちは、寒さが厳しくなればなるほど活動が鈍くなります。

氷点下20℃の世界 ダイヤモンドダスト

 ようやくこの時期らしい寒さになってきました。この数日、 氷つくような寒さのため未明3時に一度目を覚まし、 もう一度蓑虫のように布団に潜り込む日々が続いています。ただ、 この厳寒でしか見る事の出来ない光景が僕のモチベーションにな っている事は間違いありません。今朝も氷点下20℃ まで気温が下がり、 刻一刻と変わる厳寒の自然美を見せてくれました。

厳冬のはじまり オオハクチョウ

 この数日氷点下15度前後 まで冷え込む朝を迎え、ようやく冬らしい寒さになってきました。 一夜にして平地も銀世界へと 変わり、このまま根雪になるでしょう。 結氷を始めた湖沼にオオハクチョウの姿を見つけました。 これからしばらくの間、この氷上が安眠の場所になりそうです。

いのちの連鎖 オオワシ

 12月の中旬に入り、河川の中流域を遡上するシロザの姿もめっきり 少なくなってきました。 それに伴い、産卵を終えて力尽きたシロザケを目当てに河畔林に集ま って来る海鷲の姿も日に日に少なくなってきています。 時に遥か上流域の山麓まで遡上するサケマスの命が、 多くの生命の糧となり、豊かな生態系を育んでいます。

小春日和 オオワシ

 越冬のためにロシアから渡ってきたオオワシやオジロワシが河川を 遡上するシロザケを目当てに集まって来ています。 平地は変わらず 暖かい日が続き、季節感のない景色が広っています。そのためか遥か彼方に 望む雪山が、いっそうと美しく輝いているように感じられます。

暖冬 エゾシカ

 近年、暖冬が続いていますが、今冬ほど温かく、 小雪の初冬を迎えるのは初めてのように思います。当初、 ラニーニャ現象の影響で厳冬になると期待していたのですが、 温かい日か続いています。 しかし北国に生きるる人や動物たちにとっては、 有難い気候と温もりなのかもしれませんね。エゾシカが、 日だまりで気持ち良さそうに休んでいました。

ドキュメンタリー映画「GUNDA / グンダ」のご紹介

  先日、ドキュメンタリー映画 「GUNDA/グンダ」 を拝見し、 コメントを書かせていただきました。 このようなドキュメンタリー映画が、 日本の多くの皆様の目に触れる機会が増える事を願っています。12月10日(金)から全国順次ロードショーされます。 是非、映画館に足を運んでみて下さい。

銀世界 オオワシ

 強い北西の風がもたらせた雪雲が、 一夜のうちに知床の山裾を晩秋から白銀の世界へと一変させました 。そのおかげで、この一月ほど毎日早朝から通う見慣れた景色が、 違う空間に感じられ新鮮な気持ちで朝を迎える事が出来ました。 毎年この時期になると、 真っ白な新雪を見る度に心踊るのですから、 やはりこの季節が好きなんだな、と自分ながらそう感じます。もうしばらく、 知床の森で動物たちの生活を観察したいと思っています。

 

ヒグマとの時間

 動物や鳥たちの澄んだ瞳はどれも美しく魅力的で、 いつも吸い込まれそうな感覚を覚えます。 そのなかでも一際美しく、 つぶらな瞳を持つヒグマに見つめられると、 全てを見透かされているような感覚に陥ります。 森のなかで彼らと向き合う度に、 偽りのない世界に触れている事に喜びを感じ、 幸福感で満たされます。そして何よりもヒグマと対峙する時間は、 自分自身を見つめ直す大切な時間でもあります。

冬の足音

 いま知床は、季節が足踏みしている様子です。 山麓の森に初雪が降るのを待っているのですが、 なかなか思うようには自然は動いてはくれません。 知床連山の頂は白いべェールに包まれ、その崇高な山容から、 簡単にはその世界に触れられない事が分かります。 動物や鳥たちは、山麓へと移動したものもいれば、 そのまま長い長い眠りについたものもいるのでしょう。 本格的な冬の足音は、もうそこまでやって来ているのですが、 もう少し時間がかかりそうです。

河畔林のオオワシ

 知床の河畔林に越冬のため渡ってきたオオワシの姿を場所によって は20羽ほど見かけるようになってきましたが、 全体的には少ない様子です。河川を遡上する秋鮭を目当てに、 ここにやって来るのですが、その鮭が極端に少なく、 今後もこの河畔林でオオワシの姿を多く見ることはないように思い ます。

不思議な出合い エゾシカ

 近年、知床でエゾシカを目にする事が少なくなり、 今季もなかなか思うような撮影が出来ていませんでしたが、 ようやく森のなかで立派な牡鹿と出合う事が叶いました。 知床では珍しく警戒心の薄い牡鹿で、僕に出合うと「 ついておいで」 と言わんばかりに森の中へとゆっくりと進んで行きました。 独特な獣臭を放つ牡鹿の10m後方を追うように笹薮を払い除けて 進むと、苔むした倒木が転がる美しい森に出ました。 そこで立ち止まった牡鹿は、大角で地面を掘り起こした後、 大きな体を折りたたむように座り込み、休みはじめました。 40分ほど経った頃でしょうか、 若いメスジカ2頭が姿を見せ警戒音を発すると、 牡鹿はすっと立ち上がり、 その後を追うように森の奥へと足早に消えて行きました。 いま思うと、 何とも不思議な感覚を覚えた時間だった事に気づかされます。

羅臼岳とクマタカ

 晩秋から初冬へと移ろう知床の森で、この数日、 毎日のようにクマタカを目にします。 樹上からエゾライチョウやエゾタヌキ等の小動物を探しているので しょうか。オオワシやオジロワシとは、 またひと味違う精悍な姿が、 知床の原生的な景色をより一層引き立ててくれています。

夏鳥の旅立ち イカル

 多くの夏鳥が南へと旅立つなか、 知床の森で美しい囀りを最後まで聴かせてくれていたイカルも南へ と旅立って行きました。この場所に足を運ぶ度に、 イカルの囀りを楽しみにしていたのですが、 もう聴こえてこないと思うと、すこし寂しい気持ちになります。 これから夏鳥と交代するように、 越冬のために北から渡ってくる冬鳥の姿を楽しみにするばかりです

知床の森 エゾシカ

 早朝、知床の森にすこし足を踏み入れると、 ヒグマやエゾシカにエゾリス、 エゾモモンガ等の動物たちに半径50m のエリア内で確認する事が出来ました。 これまで多くの森を歩いてきましたが、 同時にこれだけ多くの動物たちに出合えるのは、 他に類を見ない知床の森の魅力の一つだと思います。 多様な生命を育む、原始的で 豊かな 森が今も多く残されています。

ヒグマの森

 いま知床の森のなかで、 ヒグマの個体識別をしながら観察を続けています。ヒグマも、 人と同じようにみんな性格が各々違います。 おっとりしているクマや警戒心の強いクマ、 同じクマでも不機嫌な時や穏やかな時など、 環境や状況に応じて色々な表情や行動を見せます。 どこの森に入っても同じなのですが、 ヒグマの多い知床の森に入る時には、 特に動物たちの聖域に入らせてもらっている、 と言う気持ちが強くなります。可能な限り、 ヒグマの表情や動きを見ながら最適な距離を保ち、 ヒグマの行動の妨げやストレスにつながらないように努めているの ですが、この距離感を見極める事がとても難しく、 最も大切な事だと思っています。

 初めてヒグマを目にした時、 こんなに大きな動物が北海道の森に生息している事に、 強い驚きと感動、そして衝撃を覚えました。 その時感じたヒグマへの畏敬の念を胸に、 この先もヒグマの撮影に臨みたいと思っています。

 

林床は黄色い絨毯 ヒグマ

 知床の森はイタヤカエデやカツラ等の黄葉が樹冠を美しく彩ってい ましたが、この数日の雨と風で多くが落葉し、 いま秋色が林床を覆っています。そんな森のなかでヒグマは、 堆積した落葉を掻き分けながら、 ミズナラのドングリをひたすら食べています。 これからやって来る長い冬に備え、 脂肪を蓄えて日に日に大きくなっているように感じられます。 黒々とした冬毛は、毛艶が一段と増し光沢を帯びてきました。 着々と冬眠の備えが、進んでいるようです。

知床峠のダケカンバ

 昨日、今季初めてオオワシの姿を確認しました。青空のなか、 雪化粧をした羅臼岳の頂から秋色を纏った裾野へと悠然と舞いなが ら消えて行きました。知床峠周辺のダケカンバは、 早くも落葉を終え、 長年強風に耐えしのいだ白い幹が山肌に強い存在感を醸し出してい ました。強風に揉まれ、折れ曲がった白い幹を見る度に、 植物たちの強い生命力をひしひしと感じます。

秋の恵み コクワ(サルナシ)

 阿寒から知床の森へと移動して来ました。 早くも知床の峰々は雪化粧をしています。 森に入るとすぐに潮風と一緒に山ブドウやコクワなどの、 熟れた果実の甘い香りが漂ってきました。 ドングリも豊作とは言えませんが、それなりに林床に見られます。 ヒグマやエゾシカ、 ネズミ等の小動物が越冬出来るだけの秋の恵みが森で密やかに育ま れています。

初雪 雀

 今朝、阿寒の森で初雪を迎えました。 しっとりとした牡丹雪が紅葉と馴染み、 少しの時間でしたが美しい世界を見せてくれました。

 

 写真の雀は、 毎年この時期になると冬の寝床を探しに雌雄で此処にやって来ます 。まだ今年の寝床は決まってないようですが、 温かい寝床が早く見つかると良いですね。

冬支度 シマリス

 大雪山の頂に初雪が降り、山の動物たちも冬の備えに忙しそうです。シマリスが真っ赤になったウラジロナナカマドの果実を、丁寧に果肉だけを剥いて口一杯に頬張っていました。この山域に生息するシマリスは、10月下旬には長い長い冬眠に入ることでしょう。

冬鳥

 この数日、 毎日のように白鳥のV字編隊が喉を鳴らしながら大雪山を越えて南 下する姿を目にします。越冬のため、 幼鳥を連れてシベリアから長い長い旅を続けて来たのです。 昨晩は上弦の月と星々が瞬くなか、頭上を飛んでいるのを、 鳴き声から確認する事が出来ました。まるで、 お互いを励まし合うように、 力強い鳴き声が夜空に響きわたっていました。

 9月上旬に大雪山の稜線から始まった秋色は、 早くも平地まで駆け下りてきました。もう平地でも、 いつ初雪が降っても不思議ではない季節です。

夜明けの樹海

 まだ夜に包まれた大雪山の麓で、 太陽が顔を出すのを待つことにしました。 下弦の月が眼下に広がる樹海を照らし、樹冠の輪郭を微かに描きだしてくれてい ます。時折、遠くから聴こえてくるエゾフクロウの鳴き声に、 耳を澄まし、その方角を確認します。 秋はエゾフクロウにとっても、 一年の中で最も栄養を蓄えなければならない季節です。 夜が明ける間際まで、狩に精を出しているのでしょう。やがて、 陽光が差し込み始めると、靄のなかから秋色に染まった樹海が顔を出 し始めました。

錦秋水面 大雪山

 いま大雪山の山裾を染める秋色を求めて広範囲を移動しています。日一日と色濃くなる山肌を染める錦秋に心ときめかせ、新たな風景との出合いを探しています。森の奥からは、繁殖期を迎えた雄鹿の鳴き声を多く耳にするようになってきました。季節は一歩ずつ冬へと近づき、美しい秋も終わりに近づいています。毎年名残惜しく過ぎてゆく季節に、あと何度出合えるのだろうか。そんなことを考えると、すこしの寂しさと焦りが入り交じった感情が体の内から芽生えてきます。

錦秋 大雪山

 今季の紅葉は、 ウラジロナナカマドの赤とダケカンバの黄色が競うよう色づいてい ます。例年、 ナナカマドの落葉が始まる頃にダケカンバの黄色が色づき始める のですが、 日照りの影響もあってなのか鮮やかな秋色がいま山肌を彩っています。

有終の美

 大雪山の山麓も氷点下まで気温が下がり初霜がおりました。 陽光にきらめく葉たちは、 有終の美を飾るようにひらひらと舞い落ちていきます。 季節は移ろい続け、もう秋も終わりに近づいています。

山裾へ 大雪山の紅葉

 大雪山の紅葉のピークは、稜線から 山裾へと勢い良く駆け下りてきました。 忙しく貯食行動に励んでいた稜線のシマリスは、 もう間も無く長い長い眠りにつくことでしょう。

雲海の朝 大雪山

 東の空から星が一つ、また一つと消えはじめると、 薄闇の中から山間を縫うように流れる雲海が少しずつ見えはじめま した。 うねりながらゆっくりと山々をのみ込むように流れる雲海が薄紫色 に染まりはじめると、 ハイマツの茂みから一羽のカヤクグリが顔を覗かせ、 ハイマツの海へと飛び立っていきました。

初雪の気配 大雪山

 大雪山は早くも初雪の気配を感じるほど、気温が下がっています。 早朝の稜線を歩くと初霜に霜柱や薄氷が見られ、 草紅葉は早くも黒ずみはじめています。 紅葉前線は近年に見られないスピードで山麓へと駆け下り、美しい山容を見せてくれています。

大雪山の紅葉

 この夏続いた日照りの影響もあり、 平地の植物は紅葉する前に落葉や黒褐色するものが目立ち、 山の紅葉も諦めていたのですが、いざ大雪山の稜線に立つと、 目の覚めるような光景が広がっていました。ただただ美しいと、心から思える紅葉です。

エクリプス(夏羽) オシドリ

 鬱蒼とした森の中の小さな湖沼で、 オシドリの雌雄が羽を休めていました。この時期は 非繁殖期のため、雌雄を羽毛で判別するのが難しい季節ですが、 夏羽から冬羽へと少しずつ換羽が始まっています。 あと一月もすれば、繁殖期(10月~5月頃)を迎えたオスドリが、 美しい銀杏羽(冬羽)を纏った 姿を見せてくれることでしょう。

夕凪  アオサギ

 夕暮れ近くの湖沼に、 何処からともなく一羽のアオサギが飛んで来ました。 周囲の様子を伺った後、 風が止み鏡のようになった水面を一歩ずつ、 ゆっくりと歩きながら小魚を探しています。太陽が山にかかる頃、 首を長く伸ばしたアオサギの周囲を、 小魚の群れが水飛沫を上げてジャンプしながら逃げ惑っている姿が 逆光に浮かび上がってきました。黄金色に輝く光が、 命の攻防をより一層とドラマチックに演出しています。やがて、 夜が辺りを包みはじめると、風波が立ち、 アオサギは川下の方角へと飛んで行きました。

しずかな朝

 朝の美しい光景に出合いました。早朝の柔らかい光は、 刻一刻と変化を続け、 赤く染まった雲がゆっくりと東へ流れて行きます。 冷え込んだ水面には朝霧と雲、深緑が共演し、辺りは 静寂に包まれています。鏡面のような水面は、 太陽が稜線から顔を出すと同時にさざ波が立ちはじめ、 目の前の景色があっという間に一変しました。北の森は、 もう秋の風が吹きはじめています。

早くも冬支度 ナキウサギ

 10年以上前に良く通った、 大雪山の麓にあるナキウサギが生息するガレ場へと移動して来まし た。毎回、このフィールドからの雄大な山容を望む度に、 朝から夕暮れまでナキウサギやシマリス、 オコジョを追いかけていた懐かしい記憶がよみがえってきます。 当時と比べれば、ナキウサギの鳴き声が少なく、 個体数も減少しているように思います。今回、 この山麓で半日ぼどの観察で、 タイミング良く仔ナキウサギに出合えました。早くも、 越冬に備えて植物を貯食する行動が何度も見られ、 山の動物たちは秋の訪れを感じているようです。 高山で健気に生きる仔ナキウサギの表情や仕草、その全てに、 こころ癒されます。

湖沼のハンター ミサゴ

 毎年、 春先になると南から渡ってくるミサゴの生息地へと移動して来まし た。10年ほど前から、 山間に位置するこの湖沼で観察していますが、 いつ見てもニジマスやアメマスを見事に捕らえる名ハンターです。 とは言っても、狩りの成功率は3割ほどです。 この個体は気象条件に合わせて、 様々な狩りの方法を見せてくれます。 無風の時には樹上に潜んで顔を大きく左右に振り、 距離を計っています。風が吹き始めると上空へと飛び立ち、 魚影の真上でホバリングをしながら狩りのタイミングを待っていま す。前記、後記ともに翼を畳んで一気に急降下し、 鉤爪から水中に飛び込みます。 雨の中では高速滑空をしながら魚影を探し、 緩やかな角度で降下し狩りを行っていますが、 狩りの成功率は更に下がり、苦労している様子です。

 まだ、このミサゴは仔育て真最中のようです。捕らえた魚は、毎回、同じ方角の山深い場所へと運んでいきます。 営巣地を確認する事は出来ませんが、 親鳥の帰りを待つ雛鳥の様子が目に浮かんできます。この秋、 この湖沼で幼鳥が狩りをする姿が見られると良いのにな…と、稜線に小さく消えて行く親鳥の姿を追いながら思っています。

イチイ(オンコ)の果実 エゾリス

北海道はお盆が過ぎると、もう秋だと言われていますが、 一雨ごとに少しずつ季節は移ろいでいます。 先日までの酷暑が嘘のように朝晩は冷え込み、 木々や林床の植物は秋色へと染まり始め、 早くも冬への備えに入った様子です。そんな森のなかで、 赤い小さな果実を多く実らせたイチイの木に、 エゾリスがやって来ました。僕も何度か口にした事がありますが、ほんのり 甘くて美味しい果肉です。只、種子には「タキシン」 と言う毒素があるので食べられません。なので、エゾリスも、 器用に種だけを残して夢中に食べています。

 この果実を目当てにやって来るのは、 エゾリスだけではありません。 キタキツネやカラ類等の小鳥たちもやって来ます。 有毒な種子ですが、キタキツネは種も一緒に食べていますし、 シジュウカラは種だけを樹皮の隙間にせっせと貯食しています。 森と言う一つの大きな生命体の中で、 小さな命ひとつひとつが共存共栄しながら生きています。 動物たちに見られるひとつひとつの行動にも意味がきっとあるので しょうね。

清流のハンター ヤマセミ

 台風10号から変わった温帯低気圧が、 太平洋の東へと遠ざかると、 先日までの暑さが嘘のように大気が一変しました。朝の気温は6℃ 、ダウンジャケットと手袋が欲しくなる寒さです。 湖沼は朝霧が立ち、 右へ左へとまるで生き物のように渦巻きながら流動しています。 そんな中、薄明からヤマセミの親仔が、 鋭い声で鳴きながら湖畔林を行き来していました。 樹上や倒木から、 鏡面のような水面へダイブして小魚を捕える姿が見られます。 その巧みな狩りの様子から「清流のハンター」 と呼ばれる由縁も納得できます。いまヤマセミの幼鳥も、 原生林に囲まれた自然豊かなこの湖沼で、 親鳥から多くを学んでいます。

森の恵み タモギダケ

 待ちに待った雨の翌日の森のなかで、沢を跨いだ倒木に黄色いキノコが顔を出していま した。短い夏に、ニレの倒木に群生する事が多いタモギダケです。 鬱蒼とした森のなかで、木漏れ日が当たると黄金色に輝き、 この森の景色の彩りを一層と美しいものにしてくれています。 辺りは微風に乗り、 ほのかにタモギダケの甘い香りが漂ってきます。以前、ヒグマが、 この香りに誘われてタモギダケを食べている姿を目にした事があり ます。ヒグマの他にもエゾリス等も好んで採食しています。 森の恵みは、多くの生命の糧となり、育んでいます。

針葉樹の森で クマゲラ (幼鳥)

 記録的な猛暑が続いている北の森ですが、 クマゲラの幼鳥3羽がすくすくと成長し、逞しく生きています。 もう親鳥と見分けがつかないほど成長し、 深い青色だった虹彩も白色へと変わっています。 まだ親鳥からの給餌に頼る場面も見られますが、 自ら針葉樹の森で蟻等の昆虫を採食しています。 この森で親鳥と一緒に行動し、兄妹が共に学ぶ時間も、 そう長くはないでしょう。

ネムロコウホネの咲く湖沼 タンチョウ

 原生林に囲まれた静かな湖沼で、 一羽の幼鳥を連れたタンチョウの 親仔に出合い ました。 緑映える水面に咲く黄色い可憐なネムロコウホネが、 見頃を迎えています。孵化後、 すくすく大きく成長した幼鳥ですが、まだ飛ぶことは出来ません。 今も、親鳥に守られながらの給餌に頼っていますが、 単独での行動も目立つようになってきました。 親鳥が少しでも目を離すと、 その様子を樹上から伺っているオジロワシが、 幼鳥に襲いかかろうとする場面が見られます。 その度に危険を察知した親鳥が、すぐに幼鳥の元に飛んで行き、 嘴を空に向けて鳴き威嚇します。しばらくの間、 雌雄の甲高い鳴き声が森のなかに響き渡っていました。 タンチョウの親鳥は、 まだ一月ほどは油断の出来ない日々が続きそうです。

日照り オオルリ(メス)

 依然として北の森は日照りと酷暑が続き、 林床の植物も枯れ始めているものも見られます。 この暑さのせいもあってか、森のなかの鳥たちの囀りや動物たちの動きが、 例年に比べ少ないように感じます。そんななか、 オオルリのメスが姿を見せてくれました。 美しく澄んだ声で鳴くオスと比べ、少し控え目な囀りですが、 またこの囀りも良いものです。山麓の森の中の様相も、 少しずつ秋へと移りはじめています。

優しい囀り ウソ

「フィーフィー、フィー」口笛のように何とも優しい歌声が、 薄暗い森の奥から少しずつ近づいてきます。やがて、 その声の主が目の前に現れました。「ウソ」の雌雄です。 針葉樹林帯で繁殖をする鳥ですが、囀りは良く耳にするものの、 なかなかその姿をこの時期に確認する事ができません。 今回はタイミング良く、しばらくの間、 林床の植物を頬張ってくれました。ウソの涼しげな囀りが、 この暑さを少しだけ忘れさせくれます。

夏山へ ギンザンマシコ

 早朝、 知床に位置する夏本番を迎えた山の頂上を沢筋のルートから目指し ました。気温は30℃を超えていますが、 豊富な水量がもたらすマイナスイオンを含んだ冷気が流域を包み、 暑さを和らげてくれています。登りの途中、 森林帯ではエゾクロテンやシマリスが顔を見せてくれ、 森林限界を越えたハイマツ帯では、ギンザンマシコやノゴマ、 カヤクグリ等の高山の鳥たちの美しい囀ずりに迎えられました。 深い緑の夏山やオホーツクブルーの景観だけでなく、 動物たちとの出合いが色濃い山行にしてくれました。 山頂付近には、早くも青紫色の秋の花「イワギキョウ」 が咲き始めていました。

猛暑日 エゾユキウサギ

 北海道各地で日照りが続き、農家さんは作物の生育に頭を抱えています。 連日の酷暑に参っているのは、人も動物たちもみな同じようです。 山麓の林床で地面を掘り起こして昼寝をしているエゾユキウサギに 出合いました。休んでいると言うよりかは、 この暑さに伸びていると言った方が良いかもしれません。 草地より土の方が冷たくて心地良いのでしょう。普段、 警戒心の強いウサギですが、 近づいても全く警戒する様子はありません。これまで、 繁殖期には大胆な行動を見せるウサギを見てきましたが、 僕のなかの常識を更に上回る行動を目の当たりにし、 驚きを隠せません。時に動物たちは、 想像を超えた行動を見せてくれます。環境の変化に適応し、 類い稀な個性を持った個体に出合うことも少なくはありません。 そんな個性溢れる動物たちに出合うために、 山や森を歩き続けています。

夏、まっ盛り キビタキ

 いよいよ北の森にも本格的な夏がやってきました。連日、30℃ほどの暑さが続き、午後になるともくもくと積雲が湧いてきます。 動物や鳥たちの仔育てのシ-ズンも終わりに近づき、 巣立ちを終えたヒナ鳥の姿も多く見かけるようになってきました。 今、 この森で早朝から美しい囀ずりを聴かせてくれるのはキビタキです 。この夏鳥の囀ずりが、森に響き渡る日も、 そう長くはないと思うと少し寂しい思いになります。 季節は止めどなく移ろいでいます。

雨上がりの森 ミドリシジミ

 早朝の雨上がりの森ほど清々しい気持ちにさせてくれるものはあり ません。草木の甘い香りや小鳥たちの囀ずり、 瑞々しい深い緑に包まれた森が深呼吸するかのように多彩な雨音が 聴こえてきます。そんな森の中で、 一際美しい小さな蝶と出合いました。森林に生息し、 ゼフイルスに属するミドリシジミの仲間です。 ターコイズブルーの羽を数秒間隔で開いたり閉じたりしています。 羽を開いた瞬間、 煌めく宝石のようなその美しさに虜になってしまいました。 森に光が差し込むと、樹冠へと舞い上がり、 テリトリーに侵入してきた他の雄を追いかけはじめました。 深緑のなか乱舞するその姿は、 幻想的な世界を映し出してくれていました。

エゾシカの親仔

 この数日、森の中でエゾモモンガの仔が穴から顔を覗かせるのを、 今か今かと期待しながら待ち続けているのですが、 なかなかその姿を見せてはくれません。 苔むした倒木に腰を下ろし身を潜め待ち続けていると、 まだおぼつかない足取りの仔鹿が、 母鹿の後を追って鬱蒼とした森の中を連なって歩いてきました。 15mほどの近距離なのですが、 全く此方に気づいていない様子です。しばらく時間をおいて、 そっとその後を追いかけると、 少し開けた草地で親仔の仲睦まじい姿を見ることが出来ました。 親仔の強い絆は、いつ見ても微笑ましいものです。

しずかな旅立ち ヤマゲラ

 この森に移動してきた目的は、クマゲラの仔育ての撮影でしたが、 タイミングが合わずに、それは叶いませんでした。 その代わりにヤマゲラの営巣木を2箇所見つけることが出来ました 。クマゲラやアカゲラと比べ、 比較的静かに仔育てを行うので出合うのが難しいキツツキの仲間で す。その一つの営巣木は、ヒナ鳥が顔を出して鳴き続け、 巣立ちが間もないことが分かります。早速、 そこにブラインドを張って様子を見ることにしました。 早朝4時前から15時間の観察を続け、時に豪雨と雷鳴が轟くなか、 2日かけて7羽のヒナ鳥が巧みな親鳥の誘導によって旅立って行き ました。これから小さな命、 ひとつひとつが逞しくこの森で生きていくことでしょう。

 
 

山裾の森へ エゾライチョウ

 エゾフクロウの森を離れ、 大雪山系の山裾に広がる森へと移動してきました。早速、 森に入るとエゾライチョウの親仔と遭遇しました。 親鳥の後を歩くヒナ鳥の大きさから孵化後2~ 3日頃だと思われます。いま森の中は、 巣立ちを終えたヒナ鳥たちの鳴き声で賑わっています。

つながるいのち エゾフクロウとアカハラ

 約一月にわたってエゾフクロウの親仔の観察を続けてきましたが、 今回初めてネズミ以外の給餌を確認しました。 この森で春先から美しい囀ずりを聴かせてくれたアカハラです。 きっとこの森のどこかで忙しく仔育てに励んでいたことと思います 。何も知らないヒナ鳥たちは、 今も親鳥の帰りを待ち続けているのでしょう。 とても残酷なようですが、 自然界では密やかに繰り広げられている命の営みです。 ひとつの命がひとつの命を育んでいるのです。そうして、 全ての命はつながっていきます。

緑深まる森 シジュウカラ

 森の緑が深まるにつれ、虫たちも多く飛び交うようになりました。 それに伴いシジュウカラの仔育ても終盤に入り、 給餌も忙しそうです。早い時には、 雌雄で30秒おきに餌となる昆虫を運んでいます。もう間もなく、 巣立ちの時がやって来ます。

エゾハルゼミの鳴く森で エゾフクロウ

 森は樹冠を覆うように葉が茂り、 エゾハルゼミが勢いよく鳴いています。 エゾフクロウのヒナたちは、 母親の後を追い鬱蒼とした森を飛び回るまでに成長しています。 そのため毎朝、その姿を探すのが大変になってきました。 親鳥が餌を捕獲し、鳴き声で給餌の合図を出すと、 ヒナ鳥は一回でも多く餌がもらえるように、 高い枝先へと移動しその鳴き声に応えます。 その鳴き声を頼りに森を歩き探しているのですが、 緑が深まりそう簡単には出合えません。 この頃になると餌を求めて集まった三羽のヒナ鳥が寄り添い、 仲睦まじい姿を見せくれます。ほのぼのとした心休まる時間が、 エゾハルゼミが鳴く森の中でしばらくの間流れていました。

森が育むいのち エゾフクロウ

 今朝は、まだ暗い3時前にセンダイムシクイの囀ずりで目を覚ましました。鳥たちの囀ずりひとつにも、季節の変化を感じる事が出来ます。 3羽のエゾフクロウのヒナたちは、 木々を自由に飛び回るまでにすくすくと成長しています。 巣立ち間もない頃には、 親鳥が日中に何度もネズミを給餌していましたが、 その回数も減り仔育ても一段落した様子です。1日森にいると、 日一日と緑が深まり、 移ろいでいく景色の中に多くの命が育まれていることに気づかされ ます。

SONY「a Universe」に記事が掲載されています

Sony a Universeに 「a 7SⅢで捉える野生動物の世界」 、4K動画と写真とともに記事が公開されています。 是非、ご覧下さい。

初夏 ツツドリ

「ポッポッ、ポッポッ・・・」 森の中で日に何度かツツドリが繰り返し鳴く姿を見かけるようにな ってきました。 センダイムシクイ等の小鳥に托卵するチャンスを伺っている様子で す。北の森で夏鳥のカッコウやツツドリの鳴き声が聴こえ始めると、みじかい夏のはじまりです。

いのちの攻防 エゾフクロウ

 この森のエゾフクロウの雌雄は、 惚れ惚れするほど巧みに狩りを行います。 木々を移動しながら横枝に止まると、 顔を回しながら林床を覗きこみ始めました。 パラボラアンテナのような顔で集音し、 気配を感じると一瞬にして林床に飛び込みます。 エゾフクロウは羽音を立てないので、 林床に敷き詰められたミズナラの枯れ葉に飛び込んだ時の「 バサッ」という音で、狩り場を確認する事も少なくありません。 飛び込んだフクロウの鉤爪には必ずと言っていいほどアカネズミが 掴まれています。これを日中に何度も繰り返すので、 3羽のヒナ鳥はすくすく成長しています。新たな命の誕生で、いのちの攻防はさらに激しく、北の森で密やかに繰り広げられています。

新緑のなかで エゾフクロウ

 雨露を纏ったみずみずしい新緑のなか、 二羽のエゾフクロウのヒナが巣立ちました。 ミズナラの樹洞から3番仔も顔を覗かせています。 親鳥は日中もネズミを捕獲し、ヒナ鳥に給餌しています。 これからヒナ鳥は、親鳥の誘導で営巣木を離れ、 餌の豊富な森の奥へと少しずつ木々を渡って移動します。

新しい森の仲間 エゾフクロウ

 北の森は朝から雨が降っています。昨日、 ミズナラの樹洞からエゾフクロウのヒナが顔を見せてくれました。 はじめて見る外の世界に興味津々のようで、 小鳥の囀ずりや風に揺れる木々を、 首をぐるぐる回して覗きこんでいます。春の陽気に誘われ、 こくりこくりと居眠りする微笑ましい仕草も見せています。 森に漂う緊張が一気に緩む瞬間です。何度見ても、 ずっと見ていたい、 そんな気持ちにさせてくれる、新しい森の仲間たちです。

真昼の狩り エゾフクロウ

 先日出合ったエゾフクロウの森を再び訪れると、 日中にも関わらず「ゴロスケ・ホーホー」 とオスのフクロウが繰り返し鳴きはじめました。鳴き声は、 暗い松林の方向から聴こえてきます。すると間もなく、 ミズナラの洞からフクロウが顔を見せました。 洞から顔を覗かせたのはメスで、 オスが餌を運んで来るのを待っている様子です。その行動から、 この洞で仔育てをしているのは間違いありません。 鳴き声を頼りに松林へと進むと、ネズミを捕らえたフクロウが、 じっと視線を反らすことなく此方を見つめています。 日中にも餌を運ぶ様子から、ヒナ鳥の数が多いのかもしれません。 まだ母鳥が洞に入っているので、ヒナ鳥の巣立ちはもう少し先になりそうです。

原生林

 何度訪れても、惚れ惚れしてしまう森を歩いています。 林床は青々としたミズゴケに覆われ、 足の踏み場を迷ってしまうほどです。至る場所で倒木更新が行われ、 美しいリズムで生態系が連綿と循環しているのがわかります。 日中夜問わず、多くの鳥たちの賑やかな囀ずりが聴こえてきます。 アカハラやコマドリ、ルリビタキ、ミソサザイにクマゲラ、 トラツグミ…の恋の歌が、この森の豊さを物語っています。昨日、 真新しいヒグマの足跡を泥地で見ました。 食痕から沢地沿いのフキを好んで食べているのがわかります。 夏になれば冷涼地を求めて、 この森のどこかで昼寝をしているのではないかと、 歩きながら想像しています。

色づく森 エゾオオサクラソウ

 いま北の森は、小さな草花が一斉に咲きはじめています。 20代の頃には、 あまり興味を抱かなかった足下に咲く小さな花ですが、 10年ほど前に高山で可憐に咲く花に魅せられてから、 ふと立ち止まり気にするようになりました。 日一日と色づいていく森のなかにいると、鳥や虫に植物、 全ての生き物たちが短い夏を謳歌しているように感じられます。

萌ゆる森 エゾフクロウ

 昨日から冷たい雨が、降り続いています。 タンチョウの親仔に別れを告げ、 広葉樹が芽吹きはじめた森へと移動してきました。 辺りが薄暗くなると、 ミズナラの大木の洞からエゾフクロウが顔を見せてくれました。 この洞の中でヒナ鳥を抱いていると思うのですが、 この日はじめて確認したので状況は判りません。毎年、フクロウは繁殖をするとは限らないので、 何とも言えないのです。もしも、 この森で仔育てをしているのなら、広葉樹の葉がもう少し成長し、 樹冠が緑で覆われた頃に、ヒナ鳥は顔を見せてくれるでしょう。 また、一週間後に訪れてみようと思います。さらに、 深い森へと移動します。

仲良し兄妹 タンチョウ

 タンチョウのひな鳥2羽は、 すくすく成長し日に日に行動範囲を広げています。 2番仔が孵化した当日は、一番仔が突っついたり押したりと、 いじめる姿を見ましたが、もうその行動は見られません。 親鳥の後を追って二羽が仲良く連なって歩き、 疲れると寄り添って昼寝をしています。この親仔は、 間もなく目の前の湿地を離れ奥深い湿原へと移動します。

誕生 タンチョウ

 南からの心地好い風が止めどなく吹いています。今朝8時52分、 タンチョウの雌雄が約30日にわたって交替で温めてきた2つの卵 のうちの1つが孵化しました。もう一つの卵は、 あと1日か2日で孵化すると思われます。雛鳥2羽が揃うとタンチョウの親仔は2日ほどで営巣地を離れ、 仔育てするのに環境の良い湿原の奥へと移動します。 いま新緑萌える北の大地は、 生命溢れ山川草木が輝きはじめています。

間もない旅立ち タンチョウ

 前回紹介したタンチョウの一番仔が誕生した後、 翌々日には二番仔が顔を見せてくれました。 一番仔は孵化して間もない2番仔を執拗に突っついていじめていま す。親鳥の愛情が半分になるのが面白くない様子ですが、 いずれ仲良くなる事でしょう。今朝、 二羽の雛鳥は親鳥の根気強い誘導に促され巣を離れて旅立ちました 雛鳥は一本のヨシを越えるのもおぼつかない足取りで大変そうです 。けれども親鳥の深い愛情に支えられ、 この先の困難もきっと乗り越えていけると、 この親仔の健気な姿から感じることができました。

春の雪 ミズバショウ

 朝からゴルフボールほどの牡丹雪が降っています。 昨日までの賑やかな小鳥たちの囀ずりも消え、 辺りはしーんと静まりかえっています。 タンチョウやオジロワシの雛鳥たちも孵化を迎え顔を出す頃です。 きっとこの雪のなかも、 母鳥が小さな生命を優しく包み込んで守っているのでしょうね。

春風 キタキツネ

この数日、 早朝から夕暮れまでキタキツネの巣から少し離れた場所でブライン ドを張って観察を続けています。母ギツネの行動から、 目の前の地中で子育の真っ最中だと確信はしているものの、 仔ギツ ネの姿を見るまでは 不安でしかたありません。 今回はその不安もすぐに解消されました。 まだ黒毛を纏い歩くのもおぼつかない小さな小さな仔ギツネが顔を 見せてくれました。確認できた三匹の仔ギツネの成長の度合いは、 まばらですが、すくすくと成長し、 ほのぼのとした表情や仕草を見せてくれています。 この森にもオオルリやルリビタキの囀ずりが春風に乗って聴こえて きます。季節は止めどなく移ろいでいます。

水芭蕉が見頃を迎えた森のなかで キタキツネ

 水芭蕉が見頃を迎えた森の中でキタキツネと出合いました。 良く見ると、お腹の乳房が膨らんでいるのがわかります。 この森のどこかで子育てをしていると思われます。 仔ギツネとの出合いが何時やってくるのか、 そしてどんな表情や仕草を見せてくれるのか、 いまから胸が高鳴ります。

ヒグマの気配 エゾユキウサギ

 ダケカンバの森でようやくエゾユキウサギに出合えました。僕を長い間待っていてくれたかのように微動だにせず、じっと此方を見つめています。春の締まった雪でウサギの足跡が残らず、勘だけを頼りに一時間ほど歩いた森の奥での遭遇です。足跡を辿って5~6時間歩いても簡単に出合えないのに本当に不思議なものです。その他にも、もう何時どこでばったり出合ってもおかしくないヒグマの気配に神経を尖らせ歩いていた事も功を奏したのかもしれません。

 今季は諦めかけていたウサギとの出合いに、幸福感と安堵が入り混じった何とも言えない感情が内から込み上げてきました。

移りゆく時のなかで トラツグミ(夏鳥)

 季節は、時の流れの一瞬でしかありません。解氷した水辺の表情は刻一刻と変わり、そこにとどまってなどくれません。冬鳥が一羽、また一羽と旅立つと翌日には夏鳥が渡ってきます。そんな移りゆく時のなかに、木々が揺れる森のなかに、繰り返す雨音のなかに空気のように僕を優しく包み込む仲間が何時もいることに、ふと気づかされます。

はじめて見る世界 エゾリス

 まだ雪深い山の斜面を登下降しながらエゾユキウサギを追って歩いてい ます。春の固く締まった雪には、 もうウサギの足跡は見られません。 僕の他にもキタキツネが追跡している痕跡が見られ、 ウサギの警戒心はより強くなっています。 遠い木陰に美しい冬毛を纏い背筋をピンと伸ばしたウサギの姿 は目にするのですが、簡単に寄せてはくれません。 また今朝も痕跡が薄く、直ぐに見失ってしまいました。けれども人気の無い静かなこの山の尾根に上がれば、 手に届くような高さをコハクチョウが鋭い羽音 を立て頭上を越えて行きます。 これまで聞いたことのない大気を裂く風切り羽の音に、 驚きそして強い感動を覚えます。 他にもエゾライチョウやエゾリス等の多くの動物たちがこの森に生 息し、時間を持て余すことはありません。写真のエゾリスは、今日初めて人間を見たのでしょう。 クルミを咥えたまま、 しばらくじっと此方の様子を伺っていました。 五分ほど経った頃でしょうか、手先を器用に使ってクルミの殻を割り美味しそうに食べ始めました。こんな山中なので、 もう二度とこのエゾリスに合う事はないと思うと、 より一層愛おしく感じます。

薄暮の森 エゾフクロウ

 名残惜しい冬の景色に誘われ、 雪深い山間部へと車を走らせ再びエゾユキエザキの足跡を辿ること にしました。 車窓から流れる景色は芽吹き始めたネコヤナギやフキノトウが、 春色をより濃く演出し始めています。 山の雪は春の固く締まった雪質で、歩くのにスキーやスノーシューの 必要がありません。けれども肝心なウサギの足跡が残らず、 感を頼りに歩き続けたのですが結局出合うことは叶いませんでした その代わりに糞等の痕跡が多く残るエゾモモンガの巣穴を見つけま した。 巣穴の周囲に獣毛が多く付着しているので、ここに入っているのは間違いあ りません。そこで、 夕暮れまで顔を出すのをじっと待ち続ける事にしました。しかし、 エゾモモンガよりも早く顔を見せたのはエゾフクロウでした。 羽音を立てずエゾモモンガの巣穴の近くの樹上にそっと止まり、 エゾモモンガが出て来るのをじっと待っています。 その様子からこの冬、 壮大な命の攻防がこの森で繰り広げられていた事が想像できます。 来季の冬、この森を再び訪れてみたいと思います。

シベリアへの旅 コハクチョウ

 この冬の道北エリアは積雪が多く湖沼の解氷が遅れていましたが、 ようやく開いた水辺にコハクチョウが次々と羽を休めに集まり始め ています。ここで羽を休めるのは10日ほどで、 間もなくシベリアへ向かって北へと旅立ちます。 彼らの長い長い旅の途中に目にする世界を一目見てみたいものです 。きっと僕らの知らない絶景を眼下に旅をしているのでしょうね。

多様な生命の営み エゾモモンガ

 この森のエゾモモンガにもようやく春がやってきたようです。 本来夜行性のエゾモモンガですが日中にも関わらず、 巣穴から出て追いかけっこをしたり戯れたりと仲睦まじい姿を見せ てくれています。この営みは 年に1度か2度見られるエゾモモンガの求愛行動( 春と夏に2度繁殖する個体もいる)で、 この行動が見られるのは1日か2日ほどです。 太古から続く多様な生命の営みが、 これから森の片隅で密やかに繰り広げられていきます。

「春の森 Forest in spring」フォトギャラリーを更新しました

 やわらかい春の風と陽光が雪解けを進め、いま北の 森は一斉に息吹き始めています。森の至る所から雪解け水が流れ、 どこからともなく鳥たちが水浴びにやって来ます。 恋の季節を迎え、絶え間なく囀ずる小鳥たち、 雪から顔を出した落葉のなかをリズミカルに澄まし顔で歩くエゾ シカの親仔。 毎年この季節になると決まって繰り返される生命の営みです。 山川草木あらゆる存在に生命が宿り、 そこに秘められた新たな物語が始まります。連綿と受け継がれてきた森の生命の物語を 「春の森 Forest in spring」 から少しでも想像していただけたら嬉しく思います。

日一日と春に向かって ミソサザイ

 数日前から数羽のミソサザイがテリトリーを回りながら絶え間なく 囀ずり始めました。この森で一際美しく大きな囀ずりです。 早くも林床には暗紫色のザゼンソウが、湿地には白いミズバシ ョウが顔を見せ始めました。春は思いのほか早く訪れそうです。

小さな春 福寿草

 森の中を歩いていると足下に一輪の福寿草が美しい花を開かせていました。福寿草を探し歩いていたわけではありませんが、タイミング良く出合うことが出来ました。辺りの林床を見回しても今咲いているのはこの一輪だけです。毎年この花を見るともう春だな、と細やかな幸せを感じます。雪解けが進むと同時に、張り詰めていた冬の間の緊張感が少しずつ動物や鳥の行動から、そして自分の内面から解かれていくのを感じます。もうすぐ、待望の春がやって来ます。

春の陽気に誘われて エゾモモンガ

 21日(日)の雪で真っ白になった北の森ですが、 翌日には瞬く間に消えてなくなりました。この数日、 最高気温が10度前後とぽかぽか陽気が続き、 春へと急加速しています。そんな陽気に誘われて、小鳥たちの美しい囀ずりが森中に響き渡っています。その美しい囀りに誘われるかのようにエゾモモンガが巣穴から顔を出してくれました。来月下旬には、 この森のどこかで小さな生命が誕生します。

春の嵐 キタキツネ

 夜中から降りだした雪が、 明朝には吹雪となり春めいてきた景色は忽ち雪景色へと逆戻りしま した。そんななか、 キタキツネが原生花園の中でじっと体を丸め暴風雪をやり過ごして いました。一見微動すらしないように見えますが、 呼吸をする度に身体を震わせています。今回、 初めて出合ったキタキツネですが、 その鼓動のタイミングに合わせるようにそっと少しずつ距離を詰め、 近距離まで近づくことができました。僕の気配を察しているものの気にしていない様子で、ぐっすり休んでいます。時々、 目をつむりながらも雪の下のネズミの気配を感じ、 耳を小刻みに動かしています。 この3時間ほどの間に2度突然飛び起き、むき出しの野生でネズミのハンティングを試みましたが成功することはありませんでし た。名ハンターのキタキツネでも、 狩りはそう簡単にはいかないようですね。

やわらかい春の日差し ハシブトガラス

 まだ植物が芽吹くまで少し早い北の森ですが、 じっと一人森で過ごしていると春の訪れを感じます。 やわらかい日差しの下、 小鳥たちの囀ずりが日一日と賑やかになり、 アカゲラの求愛行動も始まりました。そんななか、 テリトリーを主張して一際騒がしく飛び回っているのがハシブトガ ラスです。その様子から間もなく巣材運びを始めるでしょう。 いま北の森は駆け足で季節が移ろい、 動物たちは子育ての準備に追われています。

もう少し キタキツネ 

 キタキツネが雪原を足早に移動し小動物を探しています。今季、 餌場を転々とするフクロウやキツネの動きを見ていると、 主食のネズミの数が少ないように感じます。 あと一月ほどでキタキツネは出産を迎え、 森の生命は一斉に息吹き始めます。長い冬が終わりを告げ、待望の春が訪れます。

北帰行 オオハクチョウ

 日一日と陽光が強まり、北海道にも春の足音が近づいています。北海道東部の湖沼に繁殖のために北へ帰るオオハクチョウが、羽を休めに次々と集まっています。繁殖地のシベリアまで、長い長い旅がまだ始まったばかりです。しばらくの間、この地で休息をとって北へと旅立ちます。

夜明けの闘い エゾユキウサギの足跡

 すっかり春めいてきた平地の森は、 早くも福寿草が顔を出す勢いで雪解けが進んでいます。 まだ冬が名残惜しい僕は、 冬の情景を求めて山へウサギやキツネの足跡を追って日の出前から 歩き始めました。歩き始めて間もなく、尾根伝いにカッラン、 カッランと乾いた音が響き渡ってきました。 牡鹿の角突きの音です。耳を澄まし、その音の出所を確認して急いで沢を駆け下ります。幸運なことに、 硬い雪を踏みつける大きな音にも牡鹿は気づいていないようです。 あと一月ほどで抜け落ちる立派な角を惜しんでいるかのように、 山並みを背景に 激しく角を突き合って闘っています。 少しずつ陽が当たり始めた尾根伝いに、しばらくの間その乾いた音は響き渡 っていました。

雪から雨、霧氷から雨氷へ

 昨日の朝、暗雲に覆われた山へ車を走らせました。 お昼前には雪から変わった雨が樹木を氷で包み始め、 今季2度目に見る雨氷となりました。薄暮まで雲間から差す微かな光を待ちましたが、 その光景に出合う事は叶いませんでした。山で一夜を越し、 今朝は眩い黄金色の光が稜線に差し込み、 樹木を覆った雨氷が少しずつ暗闇から浮かびあがってきました。目を凝らして樹林帯に潜むエゾシカやキタキツネの姿を探しましたが見 つけることが出来ません。きっと、暴風雨から逃れ森の奥へと避難しているのでしょうね。

つながる生命 オジロワシ

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 毎年、雪解けが進むこの時期になると長い冬の厳しさで体力を失い、力尽きる動物たちの姿を目にします。この日もキタキツネとエゾシカの変わり果てた姿を続けざまに見ました。それを目当てにカラスやキツネ、海鷲が集まっています。写真のオジロワシ(右下)はこの地域をテリトリーとし繁殖をしている個体です。もう間もなくすると産卵をし、新しい生命を育みます。ひとつの生命の死は、新しい生命のはじまりです。全ての生命はつながりをもって息づいています。

雨氷の森 エゾシカ

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 森の全てが雨氷に覆われ、森は宝石のようにキラキラと輝いています。一夜にして魔法にかけられたかのような森のなかへと、誘い込まれるように森の奥、奥へと入って行きます。時間のことなど忘れて夢中になって動物たちを探し続けました。この森のどれもが美しいのですが、五感で感じる以上のものを映像で伝えることは難しいと歩きながら薄々感じていました。この先、こんな光景にあと何度出合えるのでしょうか、自然の神秘さに感動し、改めて畏敬の念を抱く一日でした。

雨氷 オジロワシ

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 一昨日の雨が美しい自然の光景をもたらせてくれました。 樹木がガラス細工のようにキラキラと輝きながら、 強風に揺られてカランカランと音を立てています。 この自然現象は「雨氷」と呼ばれ、 僕自身5年ぶりに目にする光景です。一昨日、 雨模様になった時点で雨氷になると想定はしていたので、 夜のうちに移動し早朝からフィールドに入って海鷲やエゾシカの撮 影をする事が出来ました。 このような条件に巡り合うことは希少なので、 早朝から夕暮れまで、休むことなく撮影を続け、 充実した素晴らしい一日となりました。 自然の恩恵と幸運に感謝です。

また、雪の日に タンチョウ

 吹雪や大雪予報の前日は、 翌日の被写体を決めるのに風速や風向き、 気温等の予報を参考にしながら計画を立てます。 いま降雪が少ない道東エリアで撮影しているので、 雪の日は貴重です。今朝、 目を覚ました海沿いでは予報に反してみぞれ混じりの雨、 急いで更に低温で風が比較的弱い内陸部へと車を走らせました。 夕暮れまで待ってみたのですが、 ここでもイメージしていた牡丹雪が降る事はありませんでした。 また雪の日に、この場所を訪れてみたいと思っています。

不漁とともに オジロワシ

 昨年の秋鮭漁や今季の氷下待ち網漁の不漁もあって道東の海鷲の数が明らかに少ないように感じます。例年だと風蓮湖の漁場周辺の氷上が海鷲の黒で一色に染まるのですが、今季はその光景が見られません。近年、不漁が続く北海道の海ですが、それに伴って動物や鳥たちの動向も変化しているように感じます。

「情熱大陸」ご視聴ありがとうございました

 皆様、「情熱大陸」を御視聴いただき有り難うございました。 この番組を機会に野生動物も命を繋ぎ懸命に生きている事を少しでも想像、感じていただけたら幸いです。 僕自身もこの14年の歩みを回想する良い機会となり、 新たな目標へと進む事が出来そうです。また、 過酷な環境で根気強く取材していただいた番組クルー、及び編集スタッフの皆様、 心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

小雪舞う森のなかで エゾシカ

 小雪舞う森に入って間もなく、 小鹿を含む10頭ほどのメス鹿と出合いました。 こちらを見つめるエゾシカの表情から緊張の糸がピーンと張り詰め ていくのがひしひしと感じられます。 僕はその場で立ち止まり低く三脚を構えて、 その緊張が解れるのをじっと待つことにしました。 5分ほど見つめ合い、少しずつその表情や仕草が、 緊張から解き放されていくのが感じとれます。僕にとって、 張り詰めていた緊張の糸が解れるまでの時間が、 動物たちと対話する大切な時間です。 それは動物たちが心を許し認識してくれた証であり、 喜びを感じる瞬間です。

春の気配 オジロワシ

  先日の大型の低気圧が暴風雨をもたらせ、風蓮湖は季節外れの解氷が進んでいます。 どこから解氷の噂を聞きつけたのか、 早くもタンチョウの雌雄が越冬地から風蓮湖に戻って来ました。例年なら3月に入って見られる光景です。粉雪舞うなか、 オジロワシが水面に群れるカワアイサをじっと見つめています。動物たちの行動から季節はもう春へと移ろいでいるようです。

「エゾシカ Hokkaido Sika Deer」フォトギャラリーを更新しました

 2010年の初夏、お腹の大きさがひときわ目立つエゾシカに出合いました。森の中から出てきたこの母鹿は、とてもつらそうに横になったり立ち上がったりと落ち着きがありません。そのあわただしい様子から出産が間近であることを直感しました。母鹿の警戒しない距離までそっと近づき、じっとその瞬間が来るのを待つことにしました。2時間ほど経った頃でしょうか、太陽は西へと傾き、斜光が降り注いでいます。苦しそうな母鹿が力をふりしぼって立ち上がった瞬間、胎盤とともに草原に新しい生命が産み落とされました。産み落とされた瞬間、仔鹿は全く微動だにしませんでしたが、必死になめる母鹿に応え、息を吹き返すように動き始めました。やがて仔鹿はよろめきながら立ち上がり必死にお乳を探し飲み始めました。太陽がオホーツク海に沈み暗くなり始めると、仔鹿は母鹿の後を追って、おぼつかない足取りで森へと密やかに消えて行きました。

今まで動物の出産に立ち会ったのは、このエゾシカの親仔だけです。もう10年ほど前の事ですが、知床を訪れる度に今も鮮明に当時の感動がよみがえってきます。そんな生命溢れていた知床が、今は懐かしく思えます。

「エゾシカ Hokkaido Sika Deer」

「情熱大陸」に出演します

 2月21日(日)23時放送予定の毎日放送 「情熱大陸」 に出演します。これまで自ら発信することがなかったフィールドワークやライフスタイル、動物や野鳥を撮影するまでのプロセスを臨場感溢れる映像とともにお伝えできると思いますので、是非ご覧ください。

大切な時間 エゾモモンガ

 日没後にアカゲラが掘ったと思われる巣穴からエゾモモンガが顔を見せてくれました。これまで何度も巣穴から顔を出す瞬間を見つめてきましたが、何度その瞬間に出合ってもときめく気持ちは変わりありません。この日はこの巣穴から4匹が次々と顔を見せてくれました。巣穴に入っているのかどうか、自分の直感を信じ一人待ち続ける時間も大切な時間だと感じています。

夕暮れの森 エゾモモンガ

 写真はエゾモモンガのお決まりの可愛らしいポーズですが、 実は外敵への警戒心を強め辺りの様子を伺っています。 この森ではカラスやフクロウが最も警戒すべき天敵です。 この日も夕暮れ時にカラスが騒がしくエゾモモンガの塒に集まって 来ました。モモンガはカラスの鳴き声に反応して、 巣穴とお気に入りの横枝を何度か行き来して強い警戒を見せていま す。辺りが薄暗くなり始めるとあっと言う間に樹上へと駆け上り、 静かに松林へと消えていきました。

 

再会 ハクトウワシ

 昨年に続いて、今年もハクトウワシと出合うことができました。 昨年より一回り大きく、 頭部の羽毛がより白く美しくなったように感じられます。 猛禽類独特の凛々しさと風格を併せ持ち、 それに加えて逞しさも強く感じられます。

このフィールドにいつまでいてくれるのかは分かりませんが、 もうしばらく観察を続けようと思います。

「EZO RED FOX」フォトギャラリーを更新しました

 これまで山の頂から海沿いまで多様な環境でたくましく生きるキタキツネの姿を撮影してきました。あらゆる環境に順応し、優れた5感で狩りをするキタキツネは、僕にとって魅力的な野生動物のひとつです。季節を問わず豊かな表情を見せてくれるキタキツネですが、特に仔育ての時期は思いもよらないドラマティックな生命の物語を見せてくれます。母と仔、これほどまでの強い絆で結ばれていることに何時も感慨深い思いにさせられ胸が熱くなります。そんな彼らの生きる姿を、すこしでも想像していただけたら幸いです。 「EZO RED FOX」

思いがけない出合い サンピラー

 深い雪が積もる森のなかで3日間エゾユキウサギの足跡を辿り探し ていましたが、結局出合うことが叶いませんでした。 狩の名手キタキツネもそう簡単には捕えることが出来ないのですか ら、そう上手くいくはずもありません。 すこし気持ちがめげていたのですが、 今朝は素晴らしい出合いがありました。 空模様は曇天で気象条件も決して良くはなかったのですが、 雲の隙間から光芒が差した瞬間、 サンピラーが黄金色にキラキラと輝きはじめたのです。 これまでにこうした思いがけない出合いに、 どれだけ勇気づけられてきたことでしょう。 多くのかけがえのない動物や風景との出合いが、 今の僕の原動力となっています。

極寒に生きる 雀

 僕にとって、雀もカラスも大切な被写体です。 極寒の吹雪のなか雀が、 羽毛をふくらませてじっと横枝に止まっていました。 北の大地で逞しく生きる雀を見る度に、 幼少期に巣から落下した雛鳥を育て、 放鳥した記憶を思い出します。今も昔も、 小さな命に宿る力強い生命力に感動する心は変わりません。

粉雪舞うなかで 花鶏(アトリ)

 粉雪が舞うなか、花鶏(アトリ) の群れが雪原に顔を出す植物の種子を求めて移動していました。 今季は広範囲を車で移動していますが、 冬鳥の姿を見かけることが少ないです。 年々北海道に飛来する渡り鳥の数が少なくなってきているように感 じます。

降雪のあと エゾリス

 北の森は強い寒気が弱まり寒さがやわらいでいます。 その代わりに連日のように雪が降り、 真っ白な世界が森を包み込んでいます。早朝、 さらさらの雪が降り止むと、エゾリスが姿を現しました。 ふわふわと降り積もった雪のなかを泳ぐように餌を探して駆け回っ ています。飛んだり跳ねたり、二匹で戯れたりと、 その光景はまるで降りたての雪を喜んでいるかのように感じられます。

吹雪のなか エゾフクロウ

 未明から慌ただしく除雪車が行き交う町を抜けて、 この初冬に初めて出合ったエゾフクロウの森へと向かいました。 大型の低気圧が道東に待望の雪をもたらせ、 白一色へと変わった森は、 ようやく冬らしい姿を見せてくれました。 風がゴーゴーと唸るように樹冠を抜ける音以外は何も聴こえてきま せん。いつも賑やかな森の鳥たちも、この吹雪がおさまるのを、 じっと待っているようです。 この森のエゾフクロウも風雪に耐えながら密かにたたずんでいまし た。

毛嵐(けあらし) タンチョウ

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 気温は氷点下23度、今季最も冷え込んだ朝を迎えました。 タンチョウが眠る水面には毛嵐が上り、 タンチョウの姿が薄明のなかに霞んで見えます。 寒さが増すに連れて、 この河川にタンチョウが日に日に集まってきています。時折タンチョウの鳴き声が聴こえてきますが、 太陽が昇り明るくなっても全く動く気配はありません。 日の出から約1時間経って気温が上がり始めた頃、一羽、 また一羽と群れから離れて川下へゆっくりと歩きはじめました。 刻々と変化する幻想的な世界に魅了され、 いつの間にか寒さなど忘れています。ふと 気がつくと3時間が経過し、 燦々と輝く陽光が冷えきった体を暖めてくれていました。

新年のご挨拶

 昨年はコロナで始まり、 コロナに翻弄されながら一年が終わっていきました。年内にコロナが収束し、健やかで平穏な世界が戻ってくることを祈っていま す。 コロナ・パンデミックによって更に世界の人々の分断や外的排除のニュースを多く耳に するようになりました。このような危機的状況だからこそ、 他者に配慮し、 敬う行動が大切だと日々自然を見つめながら感じています。 地球の裏側の他者の憂いや悲しみより、 幸せな姿を想像し感じていたい。きっとそれは、 いつか自分自身にも繋がり反映される事だと思います。

 
 皆さまにとって、 より良い一年になりますように心よりお祈り申し上げます。

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