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クルミの旅

 海辺を歩いていると、エゾクルミが波打ち際に漂着していた。ふと、夏の終わりに出合ったエゾリスのクルミ採りを思い浮かべていた。

 それと同時に、河口までたどり着いた足下に転がるクルミの旅を想像した。河畔林のクルミをせっせと運ぶエゾリスが1粒のクルミを川に落とした。空気を含んだ青グルミはぷかぷかと浮かび、色づき始めた落ち葉とともにゆっくりと水面を流れていく。その途中にウグイやオショロコマ、ヤマメなどに突っつかれ、やがて淵に流れ着いた枝に引っ掛かっかり、動けなくなった。数日もしないうちに青かった皮は黒ずみはじめ、柔らかくなっていく。

 数日後、大雨が降り、勢い良く水かさが増すと、寄せ集まった枝とともに、ダムが決壊するように力強く流れ始めた。激流にもまれ、皮は綺麗に剥がれた。その下をシロザケの群れが急流に負けることなく上流へと目指していく。やがて、流れは緩やかになりアオサギの鋭い視線を逃れ、開けた河口へとたどり着くとともに波に打たれて浜辺に転がった。
 
 このクルミは、また大潮の前後に大波に飲まれて大海原へと出ていくのだろう。クルミの長い旅は続いていく。
 
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